個人事業主の消費税の申告義務と有利な納税方法とは?

2020年5月17日

個人事業主の消費税の納税義務の判定方法、有利な納税方法、還付となるケースについてまとめています。

消費税とは


消費税は”消費”という行為に対して課される税金です。

普段私たちが物を購入する際に消費税を支払っていることからも分かるように、消費税を負担しているは私たち一般消費者になります。

日本の税収のうち30%くらいが消費税によってまかなわれています。

そして、私たち消費税の負担者が支払った消費税を、受け取った法人や個人事業主が、国に納付しています。

消費税の納税義務


消費税の”納税義務者”となるのは、法人や個人事業主ですが、法人や個人事業主であればだれでも消費税の納税義務所となるわけではありません。

  1. 消費税の納税義務者となるのは基準期間の課税売上高が1000万円超となる事業者
  2. その事業年度の基準期間がない法人であっても、その事業年度の開始の日における資本金の額又は出資の金額が、1,000万円以上である場合等には消費税の納税義務は免除されない

平成25年1月1日以後に開始する年又は事業年度については、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間(※)における課税売上高が1,000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者となります。なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。
※ 特定期間とは、個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。

国税庁 No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき

令和2年の7月1日に開業した個人事業主を例にとって、消費税の納税義務を判定してみると以下のようになります。

令和2年度→基準期間がなく消費税の納税義務なし(免税事業者)
令和3年度→基準期間がなく消費税の納税義務なし(免税事業者)
令和4年度→令和2年度が基準期間となり、1,000万円超であるため消費税の納税義務あり
令和5年度→令和3年度が基準期間となり、1,000万円以下であるため消費税の納税義務なし(免税事業者)
令和6年度→令和4年度が基準期間となり、1,000万円超であるため消費税の納税義務あり

※令和2年度については開業した日(7月1日)から年度末まで、1年未満となりますが、個人事業主の基準期間は単純に前々年となるため、令和4年度の基準期間の課税売上高は、令和2年度の6か月分の課税売上高となります。

また課税売上高の考え方ですが、課税資産を譲渡したときの税抜対価の金額となります。

つまり、消費税が課税されない資産の譲渡対価は含めません。
消費税が課税されない場合には、現金による寄付金(不課税取引)や土地や有価証券の譲渡、住宅の貸付(非課税取引)などがあります。(No.6209 非課税と不課税の違い

また、税抜対価である点についてですが、
例えば、基準期間の税込みの課税売上高が1,045万円で、消費税率10%だった場合は税抜き対価950万円となります。この場合には、基準期間の課税売上高は1,000万円以下となるため、消費税の納税義務はないこととなります。

さらに、基準期間が免税事業者の場合(上記の例だと令和2年、3年、5年度が免税事業者)には、その基準期間の課税売上には消費税が課されていないため、税抜きに割戻す必要はなく、課税売上の対価の金額がそのまま課税売上高となります。

消費税の有利な計算方法


消費税の計算の流れ

納付する消費税額の計算のおおまかな流れは以下になります。(参考 No.6351 納付税額の計算のしかた

  1. 売上時に受け取っている消費税額(課税売上に係る消費税額)を計算する
  2. 仕入時に支払っている消費税(課税仕入れ等に係る消費税額)を計算する
  3. 課税売上割合を計算する
  4. 課税売上割合に応じた計算方法で1.の金額から2.の金額を控除し、中間納付金額を控除して納付税額を算出する

貸し倒れがある場合などには別途調整が必要ですがだいたい上記のイメージです。

3.課税売上割合については、課税売上に係る消費税額から差し引く課税仕入れ等に係る消費税額(仕入控除税額)を算出するために計算する必要があります。基本的には課税売上割合が低いほど仕入税額控除額は小さくなります。

課税売上高は以下のように計算します。(参考 No.6405 課税売上割合の計算方法

個別対応方式と一括比例配分方式

上記の課税売上割合に応じて、課税売上に係る消費税額から差し引く仕入税額控除額を以下のように計算します。(参考 No.6401 仕入控除税額の計算方法

  1. 課税売上割合95%以上かつその課税期間中の課税売上高が5億円以下 ⇒課税仕入れ等に係る消費税額を課税売上に係る消費税額から全額控除
  2. 課税売上割合95%未満またはその課税期間中の課税売上高が5億円超 ⇒課税仕入れ等に係る消費税額のうち課税売上に対応する部分のみを控除(個別対応方式または一括比例配分方式により計算する)

課税売上割合が95%未満またはその課税期間中の課税売上高が5億円超の場合には、課税仕入れ等に係る消費税額について、個別対応方式または一括比例配分方式により計算した金額が仕入控除税額となり、その金額を課税売上に係る消費税額の金額から差し引いて納付税額を計算します。

個別対応方式と一括比例配分方式それぞれの計算方法は以下の通りですが、一括比例配分方式の方が個別対応方式で計算するよりも簡便で手間がかかりません。ただし、一括比例配分方式を選択した場合には、2年間以上継続して適用した後でなければ、個別対応方式に変更することはできません。

個別対応方式

個別対応方式によって控除仕入税額を計算する場合、その課税期間の課税仕入れ等に係る消費税額について、

  1. 課税売上げにのみ要するもの
  2. 非課税売上げにのみ要するもの
  3. 課税売上げと非課税売上げに共通して要するもの

以上の3つに区分し、

仕入控除税額=1. + ( 2. × 課税売上割合)

となります。

個別対応方式による場合は、上記の計算をするために課税期間中の仕入取引の記帳について、1.~3.のいずれに該当するかも併せて記録し、確定申告時に数値を集計できるようにしておく必要があります。

一括比例配分方式

一括比例配分方式にて控除仕入税額を計算する場合は以下の算式で計算します。

仕入控除税額 = 課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税売上割合

一括比例配分方式により計算する場合も、その課税期間の仕入等について、課税仕入れなのかそれ以外(非課税仕入または不課税仕入)であるかについては記帳しておく必要がありますが、その課税仕入れ等が課税売上げにのみ要するものであるのか、非課税売上げにのみ要するものであるのか、共通して要するものであるのかまでは把握する必要はなく、個別対応方式による計算よりは簡便的な計算方法であるといえます。

簡易課税

基準期間の課税売上高が5,000万円以下である場合には、仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とする簡易課税制度の適用を受けることもできます。簡易課税制度を適用するためには事前に届出書を提出する必要があります。

 その課税期間の前々年又は前々事業年度(以下「基準期間」という。)の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額の計算を行うことができる簡易課税制度の適用を受けることができます。
 この制度は、仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とするというものです。この一定割合をみなし仕入率といい、売上げを卸売業、小売業、製造業等(注)、サービス業等、不動産業及びその他の事業の6つに区分し、それぞれの区分ごとのみなし仕入率を適用します。

 みなし仕入率
第一種事業(卸売業)90%
第二種事業(小売業)80%
第三種事業(製造業等)70%
第四種事業(その他の事業)60%
第五種事業(サービス業等)50%
第六種事業(不動産業)40%

(注) 令和元年10月1日を含む課税期間(同日前の取引は除きます。)から、第三種事業である農業、林業、漁業のうち消費税の軽減税率が適用される飲食品の譲渡を行う事業を第二種事業とし、そのみなし仕入率は80%(現行70%)が適用されます。

国税庁 No.6505 簡易課税制度

法人成りの利用

個人事業主が法人成りした場合、設立した法人には基準期間がなく、原則として消費税の納税義務は免除されます。
※その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である場合等一定の場合は納税義務は免除されません。

個人事業者がいわゆる法人成りにより新規に法人を設立した場合には、個人当時の課税売上高はその法人の基準期間の課税売上高に含まれません。

国税庁 No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき

知らなくても機会を逃すことはありませんが、法人成りを検討する際には、ひとつの検討要素となってきます。

消費税の中間申告と納付について

直前の課税期間の確定消費税額が48万円を超える場合には、消費税の中間申告と納付が必要になります。
参考 No.6609 中間申告の方法

まとめ

95%未満またはその課税期間中の課税売上高が5億円超の場合には、仕入控除税額の計算について、個別対応方式と一括比例配分方式のいずれか方法により計算するため、自身に有利な方法を選択する余地があります。ただし、個別対応方式の場合は一括比例配分方式によるよりも手間がかかります。

基準期間の課税売上高が5,000万円以下である場合には、簡易課税制度の適用を受けることができるため、仕入控除税額の計算にあたって有利な方を選択することができます。また、簡易課税制度によればその課税期間中の仕入等について、課税仕入れであるのか非課税仕入または不課税仕入であるのかを把握していなくても仕入控除税額が計算できるメリットもあります。

消費税が還付となるケース


多額の設備投資をした場合や、輸出による売上が多い事業者では、売上げに係る消費税額よりも仕入れに係る消費税額が多くなり、還付となるケースが想定されます。

還付が生じる場合には、免税事業者であっても、課税事業者を選択することによって、消費税の還付を受けることができます。

ただし、課税事業者となるために”消費税課税事業者選択届出書”を提出した場合には、原則として最初の課税期間を含めた2年間は免税事業者に戻ることができないため、還付が見込まれる年度の翌年度も含めて有利不利を判断する必要があります。

 また、設備投資が多額にあった場合や、輸出業者のように売上げに係る消費税額よりも仕入れに係る消費税額が多く、経常的に還付が生じる事業者については、免税事業者であっても課税事業者を選択することによって、消費税の還付を受けることができます。
 課税事業者となるためには、原則として課税事業者となろうとする課税期間の開始の日の前日までに、「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署長に提出することが必要です。ただし、新たに事業を開始した場合には、その事業を開始した日の属する課税期間の末日までに提出すれば、その課税期間から課税事業者となります。
 この届出書を提出した事業者は、事業廃止の場合を除き、原則として、課税選択によって納税義務者となった最初の課税期間を含めた2年間は免税事業者に戻ることはできません。
 なお、免税事業者に戻る場合には、事前(前課税期間中)に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。

国税庁 No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき

まとめ


基本的な消費税納税額の計算方法は、(受け取った消費税)-(支払った消費税)です。

基準期間の課税売上高が1,000万円超となる事業者は消費税の納税義務者となります。

課税売上割合が95%未満または課税売上高が5億円超の場合には、個別対応方式または一括比例配分方式により仕入控除税額を計算します。

課税売上高が5,000万円以下である場合には、簡易課税制度により仕入控除税額を計算することが可能です。

消費税の還付が生じるケースでは、免税事業者であっても課税事業者を選択する方が有利となる可能性があります。

消費税納税についての有利不利については、比較的判断しやすい面もあるので、一度は確認してみてもいいかもしれません。